2010年1月28日木曜日

秀吉の朝鮮出兵に思う



遅ればせながら、年末、正月に観たテレビで色々考えさせられたシリーズ第3弾として

秀吉による朝鮮出兵

を取り上げたいと思います。

これはNHK教育、

ETV特集 シリーズ「日本と朝鮮半島2000年」
第8回 豊臣秀吉の朝鮮侵略

http://www.nhk.or.jp/japan/program/prg_091129_3.html


でやっていたものです。

朝鮮出兵として私が歴史で習って覚えているのは、

「秀吉が朝鮮に出兵しました」、という教科書の数行の記述だけです。

私はその頃、

へぇ~あの時代に結構勇ましいことしてたんだなぁ~。

という印象だけでした。


しかし今回の番組で、韓国側からの資料や発掘によってその実態を知り、

けっこうとんでもないことだったんだということを知るに至りました。

送った兵力が15万人とかで、

その戦いの中で、女性や子供の首をはねるは、鼻や耳をそいで日本に送るわと、そうとう残虐なことをしていたようです。


私は、なぜ朝鮮の人がいつまでも反日感情をもっているんだろうか、昔のことは昔のことじゃない、となんとなく思っていましたが、

これだけのことをやられていたら、そうそう昔のことはなかったことにしようなどと簡単に言えるもんではないなぁと思いました。

それは逆の立場になってみたらよくわかります。

別に相手に対してなにもしていないのに、いきなり15万とかの兵隊を送り込まれて、

国土を蹂躙され、国民を殺され、一部の人は国外に永久に連れ去られたままです。

そういった朝鮮から連れてこられた職人たちによって日本に有田焼などの磁器がうまれました。


日本の教科書で学ぶ歴史観は、それなりに中立なのかなと思っていたのですが、

実は日本に都合の悪いことに関しては、なるべく記述を小さくしているんだということを、今回の番組を見て感じました。

と同時に、歴史で起きた事件を正しく知ろうとしたら、やはり双方のストーリーに耳を傾ける必要があるんだなということを実感しました。

朝鮮の人たちは、自分たちがされたことを誇張して伝えていくだろうし、

日本の方は、自分たちにとって都合が悪く、触れたくないものは、その記述を小さくしていくと思います。

番組内で、秀吉軍を撃退したある韓国の水軍の将を英雄として扱っている様子をやっていました。

その人物は歴史小説に書かれていて韓国では有名なのだそうですが、




孤将 (新潮文庫)

これを訳したのは、朝鮮に拉致されたあの蓮池さんだそうです。


しかしこの番組を見て、一番感じたことは、

なぜ秀吉は朝鮮に出兵しなければならなかったのか

ということでした。

番組によると、それまでに日本国内をほぼ平定していた秀吉は、

部下に恩賞として土地を与えるのに日本国内だけでは足りなくなって、朝鮮に目を向けたという説明がなされていました。

しかし、本当にそれだけだったのか、どうして日本国内を統一した時点で鉾をおさめることができなかったのでしょうか。

私はこの秀吉の大軍を投入した無節操な戦い方に、無計画な太平洋戦争の戦いがだぶりました。

日本人は同じことを繰り返したのではないか、と。

そしてこの常に拡大・成長を求める欲望というのは、実は秀吉や第一次、第二次世界大戦だけの話だけでなく、

今のいまに通ずるとても大事なキーポイントがあるのではないかと思うのです。

それは、

成長、発展の先に幸せがある

という幻想を追いかけているのではないかということです。


たとえば、前に紹介した細野さんの経済の本を読んで初めて知ったのですが、

経済成長率というのは、前年の国内で使われたお金に対して今年は何%と増えたかということらしいですね。






私たちは常に、経済成長がプラスでないとならないというような強迫観念にかられているように思いますが、

国民が豊かになって、家電も車も一通りそろっているのに、経済成長率がプラスでないといけない

前年より多くのお金を使っていないといけないというのはなんなんだろうか、と思うのです。

これはまさに、ミヒャエル・エンデが指摘している成長の強要文明の病であり、そのために消費が煽られ、

それにともなって様々な問題がでてきて、人はより一層忙しくなっていくということなのではないかと思うのです。

その一端は、おそらく食の過剰摂取によるガンとしてあらわれているようにも感じます。


秀吉の朝鮮出兵は単なる昔のできごとではなく、

私たちは彼がしたことをしっかり見つめることで、同じ失敗を繰り返さないようにしないといけないと思うのです。

それは単に領土の拡張ということだけでなく、

発展や成長の先に満足、幸せがある

という命題についてだと思います。

このことを一度止まってしっかり見直さない限り、人はいつまでも延々と忙しいままだし、

自分たちがなぜこんなに忙しいのかもわからないまま、ただ忙しさに流されていくだけなのではないかという気がするのです。

これはまた、脳卒中を起こした脳科学者テイラー博士の指摘とも通じてきます。

彼女は、幸せを感じれるかどうかは選択の問題であるといっています。

まずは選択肢があること、そして私たちは選択できること

を知っておく必要があると思うのです。

秀吉の中にあった心性をしっかり見据えることで、私たちは同じ失敗を繰り返さないようにしなくては、

と年の初めに深く感じたのでありました。



おしまい。


参考:

ETV特集 シリーズ「日本と朝鮮半島2000年」
第8回 豊臣秀吉の朝鮮侵略
http://www.nhk.or.jp/japan/program/prg_091129_3.html

2010年1月31日(日)午後10時~11時29分
第10回 “脱亜”への道 ~江華島事件から日清戦争へ~
http://www.nhk.or.jp/japan/program/prg_100131_3.html

孤将 (新潮文庫)

文禄・慶長の役 〔ウィキペディア〕
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%87%E7%A6%84%E3%83%BB%E6%85%B6%E9%95%B7%E3%81%AE%E5%BD%B9



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