2010年1月7日木曜日

選択のちから ~ ある脳科学者の涅槃体験 ~ ≪続≫



37歳で脳卒中を起こし脳に深刻なダメージを受けたテイラー博士は一命は取り留めたものの、

術後、身体的にも精神的にも赤ちゃんのような状態に戻ってしまったといいます。

その時リハビリを助けたのが82歳になる母親、通称ジジだったそうです。




実は彼女、数学者で数学の問題を解くのが趣味なのだそうです。カッコイイなぁ、、、。






ホントに数学を解くのが好きで、一日中数学の問題に取り組む事もあるそうです。









そんなバリバリの数学者である母親が、涅槃の体験を説く元脳科学者の娘を介護するのです。人生とは面白ですね。

テイラー博士は、脳の手術で再発防止の為に出血した部分を切り取ったそうなのですが、




実はその切り取った部分というのが数字を扱う部分だったため、1+1を理解するのに何年も掛かったのだそうです。

数学者の娘が1+1を理解できなくて苦しむというのは面白いですね。

足し算より引き算、引き算より掛け算、掛け算より割り算が難しかったそうです。


母と娘の二人三脚でリハビリに取り組んでいくのですが、その指針は、

できないことにクヨクヨするのではなく、できることを伸ばしていこう

というものだったそうです。まさに長所伸展法

これは私たちにとっても参考になることですね。

彼女たちは出来るようになった事をひとつ、ひとつ紙に書いて励みにしたそうです。













そして8年目になってはじめて体に感じていた液体のような感覚がなくなって日常生活を送れるようになったのだそうです。

テイラー博士は、脳卒中の患者に、脳卒中の犠牲者ではなく、脳卒中の生存者、脳卒中という病を患って生き抜いたんだという気持ちを持つ事が大切だと説いています。

このような意識の持ちようだけで、回復に大きな違いがでるのだそうです。

脳は損傷を受けると、それを回復させようと新生児と同じ様な状態になり必死に神経細胞を再構築しようとするそうです。







ミクログリアが傷ついた神経細胞にらせん状にからみついて↓、切れていた神経細胞を再生させるのだそうです。







また下の写真のように、神経細胞はいくつになっても新しい芽を出して、ネットワークを構築しようとするのだそうです。




脳トレや日常生活で新しいことに挑戦するなど、いくつになっても脳を刺激する事は大事だそうです。




テイラー博士は術後、右脳の機能が優位になったからか、ものごと関してより視覚的になったそうです。

下は、脳卒中前にステンドグラスで作った脳だそうですが、




術後は、このような脳になったそうです。









また日々の森での散歩も、術後はより五感で感じられるようになったそうです。




テイラー博士は、森などを歩くと雑念から離れられ、言葉を司る左半球から解放される感覚を得られるといいます。

宗教的な修行が自然の中で行われるのも、この左脳の束縛から解放されやすいということがあるからなのかもしれません。

またこれは、私たちがたまに自然の中に身を置くことの大切さを説いているようにも思います。

彼女は現在、森を歩くと、たとえば風が吹いてくると、その風の源に結びつくことができるといいます。(まるでネイティヴ・アメリカンのようです)




このように、自然の中に自らを置くと、簡単に自然と結びつくことが出来るのだそうです。

テイラー博士は、術後のリハビリやこのような不思議な体験を、友人のすすめで本にしたそうです。




この本の売り上げは50万部にせまる勢いで、また世界30か国で翻訳が進んでいるそうです。

ということは、、、

とアマゾンで調べてみると、 ありました↓


奇跡の脳


いま私はこの本を読み始めています。

この本は、脳卒中の患者の言いたい事を代弁していると評価され、脳卒中の患者がもっとも勇気づけられるのだそうです。

読後、また新たな発見があったら当ブログで取り上げるかもしれません。


ウォーキングをしながらパソコンに向かうテイラー博士







リハビリの一環なのか、前にここでも紹介した『ブレイン・ルール』を読んで実践しているのか、

写ったのは一瞬でしたが、リーズナブルだと感じれば自分の習慣に取り入れるというのはさすがだなぁと感じました。


テイラー博士は言葉を失ったときに宇宙とつながる一体感をもち、幸福感を味わったわけですが、

言葉を取り戻した後、その幸福感を維持するのは困難だったのでしょうか。


テイラー博士によると、自分の中には二つの速さの自分を感じることが出来るのだそうです。

一つはとてもゆっくり考え、感じる自分で、

もう一つはスピーディーで、分析的、機敏にものごとを処理する自分だそうです。

しかしながら、本物の自分とは、ゆっくりの方の自分だそうです。


彼女は、左脳は自然から与えられた素晴らしい贈り物であるといいます。

左脳は、文明の繁栄をもたらし、コミュニケーションを可能にし、自分を定義し、「個」を認識できるようにしたと指摘します。

私たちの多くは、左脳優位で生きていますが、彼女によると、

誰でも、いつでも右脳の能力を引き出せ、平和や幸福感、涅槃の感覚を感じられるそうです。


彼女はこれは、

選択の問題


だと述べていました。

その選択が出来る為には、まずその選択肢が有ることに気付く事が最初のステップだと述べています。

これはとても大事なポイントだと思います。

このことは、ブッダをはじめ、昔からの聖賢が一貫して説いてきた点だと思うのです。


また仏教との関連で言えば、瞑想は想念にとらわれない時間をもつこと、すなわち言葉によって考える事を退ける体験ですが、

これはまさに、心の選択の問題であって、テイラー博士が説く左脳の呪縛から解放されるという指摘と共通するように思うのです。

私たちは座禅のような型にはまった瞑想をする必要は無いと思いますが、真の幸福感を味わいたいと思うなら、彼女のいうことを参考に、

毎日の生活の中に、考えない時間をもってみる(=左脳から解放される時間をもつ)というのは大事なポイントなのかもしれません。

そして、考えにとらわれず、かつ眠ってしまわないのに有利な体のポジションや動作とはどんなものなのかを、

数々の伝統を参考にしながら自分で模索し、自分のカタチを見つけていくのが大切なのかなと私は思います。

おそらく、座禅やヨーガをセンセイの言われるままに真似して自分に強いるようなことをすれば、それは百害あって一利なしだと思います。

基本は心の状態を観察しつつ、自分がどう感じているかにあると思います。


現在テイラー博士は、講演で、右脳と左脳のバランスをとることが大切だと述べているそうです。

論理優先の社会が抱える問題を解決するヒントが有るのではないかと、テイラー博士は、数々の講演に招かれるそうです。




彼女は、自分の今考えている事に注意し、自分が考えている事に責任をもちなさいと聴衆に語るそうです。




よりよく生きたいと望む方向に決断していけば、どんな道でも切り開いていく事ができる、と講演では述べているそうです。






















内容(「BOOK」データベースより)
統合失調症の兄を持った「わたし」は、小さい頃から脳に興味を抱く。同じものを見て、どうしておにいちゃんとわたしは反応が違うの?努力の末に脳科学の専門家となり、ハーバードの第一線で活躍するわたしは、誰よりも脳について知っているはず、だった―。1996年のある日、37歳で脳卒中に襲われ、生活は一変する。左脳の機能が崩壊し、言葉や身体感覚だけでなく、世界の受け止め方までも変わったのだ。体力の補強、言語機能を脅かす手術、8年間に及んだリハビリ。そこでわたしが得たものとは、何だったのか。脳卒中になりうるすべての人に―。








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