2010年1月5日火曜日

カリキュラムにならない教育



年末年始にやっていた色々な特番を見て考える事がありました。

一つは、NHKでやっていた二人の女優が自転車でハワイを巡る紀行ものでした。

その中で、現地のひとからハワイ伝統のフラダンスを習うシーンがありました。

フラダンスというのはもともと自然の動きを模したもので、神に捧げる神聖な踊りなのだそうです。

二人の女優が現地の先生にフラダンスを教わっていましたが、その中で先生が何気なく、

みんなと動きをあわせて

とふたりに注意していました。


私はそのダンスの練習風景を見ながら、教育について考えていました。

おそらくハワイの原住民の人たちは、みなフラダンスを小さい頃から習っていただろうと思います。

そのようにして育った子達は、将来どうなるだろうか、と考えたのです。

たぶんフラダンスを通じて、みんなと調和して動くこと、自然と調和する事の大切さ、自然や神聖なるものを敬うことを自然に身に付けたのではないか、と思うのです。

こういうものは、学校のカリキュラムにならない教育ですが、実は人間の形成において根幹をなすもっとも重要な教育なのではないか、と思ったのです。


もうひとつ、これと共通することを感じたシーンがありました。

それは、ハワイのマウナケア山の山頂にいって、日の出を見るシーンがあったのです。

マウナケア山は4000mを超える山で、下には雲海が広がり、その雲海のかなたから太陽が徐々に上がってくる様子は、画面を通して見ていても、神秘的で神々しいものでした。

実際にその光景を目の当たりにしていた女優さんたちの目からは、自然とが流れていました。

そしてあまりに美しすぎて、言葉にならないと辛うじてコメントしていました。

こんな体験をたまにしないとダメだね、というようなことをお互いに話していました。


教室で文字を通して行う教育というのも当然大切です。

しかし、言葉を介さない直接的な体験、体感、体得というものの方が、実はもっと大切なのではないかと思うのです。

そのような体験は、言葉による教育よりインパクトがあり、またその人の意識の底にいつまでも残って、何かをするとき、生きていく上での基盤をなすように思うのです

では逆に、このような自然にふれて感動するような体験をまったくもたないような子供が大人になったとき、いったいどのような振る舞いをするのだろうか、と考えたとき、ちょっとそら恐ろしい気がするのです。


実は同じ様な視点が、正月番組の養老猛さんと宮崎駿さんとの対談番組の中で語られていました。

宮崎駿さんは、トトロで描かれているような自然を体感してほしいが、そのためにはあまりトトロばかりを見て欲しくないんだというようなことをおっしゃっていました。

つまり冷暖房のきいたところで、トトロを見るというのは、自然からかけ離れた体験であって、

本当は戸外に出て自然に触れて欲しい、というのが真の願いなのだそうで、いつもアニメをつくりながら、そのような相反する矛盾にさいなまされるといっていました。

ということで、宮崎駿さんは子供が自然に充分ふれることができるような保育園を作ってしまったのだそうです。

(基本的にはスタッフの子供たちしか入れないそうですが、、、いまさら保育園にいけないオジサンとしては少なくとも三鷹の森 ジブリ美術館ぐらいには行っておきたいなぁと思うのですが、、)

また解剖学者の養老さんも、そのような観点から定期的に子供たちを引き連れて山に行っては、昆虫を捕まえるようなことを催しているそうです。


教育、教育ということがよく話題になりますが、教育というものを語るとき、教室で教えられ点数で計れる教育のほかに、このようなカリキュラムにならない教育というものも同時に視野に入れるべきであろうと思うのです。

日本も昔はハワイのフラに相当するものが何がしかあって、それを通じて人や自然と調和する事の大切さを自然に身に付けていたのではないかと思います。

それが現在どのような形で残っているのか、残っていないのか、私には分かりませんが、

少なくとも子供たちには、なるべく自然に触れさせて、美しいものを感じる体験を多くもたせるべきだと思うし、

また私たち大人も、自然の美しさに触れる機会を意識的にもっともつべきだろうなと思うのです。

でないと文明がゆがんだものになっていくような気がするのです。

それは地に足の付いていないラピュタのようになっていくのではないでしょうか。それもある意味ロマンがあるといえますが(笑)


そういう意味では、少なくとも一年に一回、正月元旦にしっかりと日の出を自分の目で見、肌で感じるというのはとても大切な事なのじゃないのかと思うのです。

そういう体験をしてこそ、真に

明けましておめでとう

といえるのではないかと思うのです。



おしまい



参考:

三鷹の森 ジブリ美術館
http://www.ghibli-museum.jp/



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