2009年11月18日水曜日

リーマン予想 その② -The Riemann Hypothesis ②-



多くの数学者がリーマン予想の解明を敬遠するなか、ひとりコツコツと研究を進める数学者がいました。




それが、ルイ・ド・ブランジュ博士です。

彼はこれまで三度、リーマン予想を解いたと発表し、その都度間違いを指摘されてきたそうです。

そのため狼少年と揶揄されることもあったそうなのですが(笑)、そんな嘲笑など意にも介さずリーマン予想の解明に心血を注いできたのでした。

彼は研究を重ねる中で、素数の配列がミクロの世界と密接に関連しているのではないか、と直感したのだそうです。




それはどういうことかというと、光がプリズムを通ると、




その波長の長さによってそれぞれが屈折し、虹色の模様を見ることが出来るのですが、

その屈折されたそれぞれの波長の光が投射される位置と、リーマン予想のゼロ点の位置に関連があるのではないか、と直感したのだそうです。




素数とミクロの世界が関係している???

と多くの人は取り合わなかったそうですが、そんななかある偶然の出会い驚異的な発見をもたらすのです。


それは1972年、アメリカのプリンストン高等研究所でのことでした。




物理学者のフリーマン・ダイソン博士が、お茶の時間にこの研究所をふらりと訪ねるのです。




ダイソン博士は、そこにいた数学者のヒュー・モンゴメリ博士と何気ない会話を始めました。




お互いの研究がどういうものかを話していく中で、

ヒュー・モンゴメリ博士は、自分の研究であるリーマン予想のゼロ点の位置が、もともとの素数の出現がランダムであるにもかかわらず、

比較的均等に出てくるんですよ、と数式を示して説明したのだそうです。

すると、その数式をみた物理学者のダイソン博士の顔つきがみるみる変わっていったのだそうです。

なんとリーマン予想におけるゼロ点の間隔を示す数式が、ダイソン博士の専門である原子核のエネルギーを示す数式とまったく同じだったのです。




これはどういうとかというと、

原子の中心にある原子核の質量は、あるとびとびの値を取ることが知られており、そのとびとびの値を求める数式があったのですが、




その数式がまさにリーマン予想におけるゼロ点の位置を示す式とピタリと一致したのです!




凄すぎる!!

テレビを見ていた私でさえ、興奮して鳥肌がたったぐらいですから、本人たちの感動はどれほどのものだったのでしょう、想像もつきません。

このことは取りも直さず、先のルイ・ド・ブランジュ博士のミクロの世界と素数の配列に関連があることを示すものでした。

これがひとつの契機となって、数学者だけでなく、物理学者なども含めた200人に及ぶ世界の頭脳が結集し、リーマン予想について考える会議が1996年に催されたのです。




その会議において、あるひとつのリーマン予想の解明につながる道筋が示されました。

それは数学界最高の頭脳と称される アラン・コンヌ博士によってもたらされました。




彼の専門は非可換幾何学(ひかかんきかがく) と呼ばれるもので、




私たちが一様だと感じているこの空間がひずみのある小さな断片によって成り立っているとする幾何学なのだそうですが、





この幾何学は、ミクロの世界に対する新しい考えを提供するもので、

この幾何学を使うことでミクロの世界とリーマン予想の関連が解明されるのではないかということが見えてきたのだそうです。


ある数学者は、素数の配列に隠された暗号を解くことは、ミクロの世界から宇宙全体に至る万物を司る法則

すなわち創造主による宇宙の設計図がわかるのではないかと述べているそうです。


そんな流れの中、はじめに紹介したルイ・ド・ブランジュ博士は、四回目となるリーマン予想の解法を、、、







完成させるのです!?





そして口笛をふきつつ、論文をつめたカバンをもって自宅を出ていくシーンで番組は終わっていきます。







さて、彼の解法がこの二年間の検証に耐え、狼少年の謗りを返上するとが出来るのか、楽しみであります。。。


番組を見終えて感じたことが幾つかありました。

まずその一つは、難解な事柄をわかりやすく解説することの重要性です。

おそらくこういった知はまだまだ各方面に埋もれているのだろうと思うのですが、

専門知識のない一般の人にもわかるように翻訳して社会に還元してくれることは極めて重要だと思うのです。

というのも、たとえば私たちは中世の宇宙観、

地面が平らで、大地の周辺は滝になっていて、太陽や星々はその大地のまわりをまわっているとする世界観をもっていても、

多くの人にとっては日常生活になんら支障なく過ごすことが出来ます。

しかし、地面は丸くなっていて、地球こそが太陽の周りをまわっているという世界観を知ることで、この現実に対する新しい認識の枠組みを得ることが出来ます。

それとおなじで、素数とミクロの世界がリンクしているかもしれないという画期的な発見は、この世界に対する新たな視点をそれぞれの人の中に植え付けることになると思うのです。

人は様々な現象をより単純な枠組みで理解しようとしますが、その時にこのような観点を知っているかいなかで、発想に大きな違いが出てくると思うのです。

そういう意味で、こういう最高の知を一般の人に分かりやすく伝えるというのはとても重要な仕事だと思うのです。

このような数学関連の知でいうなら、フラクタルの発想は極めて重要であると感じます。

フラクタル的な発想は、私たちが人生、自然、宇宙そしてあの世(?)を考える上で欠かせない知の枠組みといえると思うのです。

なんせこちらは、マンダラの世界と対応しているのですから、、、。


また番組を見て思ったことの一つは、垣根を越えて知を共有することの重要性です。

お茶の時間にたまたま二人の学者が雑談することで世紀の発見に至ったわけですが、

逆に言うとそれだけそれぞれの専門の世界の壁が厚く、高く、お互いの知を共有することができなくなっているということです。

これはとてももったいないことです。

こういう垣根を越えた知の交流というものをもっと意識的に色々な場でもつことで、様々な素晴らしいアイデアが出てくるのではないかと思うのです。

またこの出会いが、お茶の時間=息抜きの時間、遊びの時間に起こったというのも注目すべき点かなと思います。

遊びの時間などもったいないと考えていたら、こういった飛躍的な進展もなかったわけで、時間的、空間的に遊びの場をしっかり確保するというのは、

大きな視点からすると、遊びなしで突き進むよりプラスになっていと思います。


またもうひとつ、番組をみて感じたことは、こういう知識を学校で是非教えてほしいということです。

なんでこんな素晴らしいことを教えないのか、ホントもったいないことです。

オイラーが発見した式は、「素数」と「円周率π」の知識さえあれば理解できるものです。

このような知の神秘に小さいうちから接することで、世界には不思議なことがたくさんあるんだなぁ~と実感して、自然とその分野に興味を持つようになると思うのです。

こうして興味をもってしまったら、もう誰も止めることが出来ません。

あとは興味のある人は自動でどんどん知識を深めていくことでしょう。

こういった感動=「自動学習の種」みたいなのを授業の中でどんどん播くことで、

学生は学ぶことの楽しさを知り、カタにはまらない学習というものを身につけていくと思うのです。

なんどもこのブログでも書いている、意欲を育む教育というものを、こういう感動体験に接しさせることで育んでいけたら、面白いことになって来るのではないかと思うのです。


しかし今回の番組は本当に面白かったです。

是非、是非、このような素晴らしい番組をこれからもどんどん作っていってほしいです。

NHKさん、どうも有り難う!



参考:

非可換幾何学(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%9E%E5%8F%AF%E6%8F%9B%E5%B9%BE%E4%BD%95


1 件のコメント:

tai さんのコメント...

n物理と数学のかきしっぽ

にて

リーマン予想の証明に成功しました