2009年5月16日土曜日

二宮金次郎 〔Ninomiya Sontoku〕



Ninomiya Sontoku's birth place



今回は、4月のはじめに長野からの帰りに寄った

尊徳記念館



について書こうと思います。


場所は、小田原から小田急線で4つ目の「栢山」(かやま)駅で下車し、歩いて15分ぐらいのところです。

駅で地図を見ると川沿いにあったので、小川沿いに歩いて行ったところ建物が見えてきました。




そしてここが入口↓




後でわかったのですが、ここは裏口で正面の入口は別にありました。


石橋を渡って中に入っていくと、二宮金次郎の像が立っていました(等身大)↓



金次郎は身長が180㎝ぐらいあったらしく、かなりがっちりした体格でした。

さらに進むと、茅葺屋根の家が見えてきました↓




これは二宮尊徳の生家だそうです。




尊徳が住んでいた江戸時代の家がまだこの平成の世に残っているのか、、、と少し感動しました。




さっそく中に入ってみました。













入ると木の独特の匂いに包まれました。

中央に囲炉裏がありましたが、板張りでは冬は相当寒かっただろうなどと想像しました。


土間には当時使われていた道具が置かれていました。



おっ、あった、あった。二宮金次郎といえば、この背負子(ショイコ)でしょ。

写真では見にくいですが、「やせ馬」と書いてあります。


いつも思うのですが、こういう道具は「触らないでください」の札とともに単に置いて見せるだけでなく、

実際に荷物を載せて背負えるようにしてあればいいのになぁ、と思います。

そうすれば、色々な発見があるだろうし、当時の人の気持ちも少しは理解できると思うのです。

それでこそ来訪者に真に理解してもらうことになるし、来た人にとっても真の学びになると思うのです。




下は二宮金次郎も眺めたであろう、天井。




くねくね曲がった柱もうまく使われています。こういう天井は、幾何学的で見ていて飽きないなぁと思いました。

幼少期の金次郎は、寝っ転がってこの天井を見て何を思ったのでしょうか、、、




外に出ると、道路側に石碑が立っていました。




これには二宮尊徳の教え『貧富訓』が刻まれています。


貧 遊楽分外に進み、勤労分内に退けば、
  則ち貧賎、其の中に在り。

冨 遊楽分内に退き、勤労分外に進めば、
  則ち冨貴、其の中に在り。



遊びが度を超え、労働が少なければ貧しくなり、

遊びが身の丈に合った範囲内で、一所懸命働けば豊かになる


という何とも簡単な原理を説いたものです。


これは二宮尊徳の教えの「分度」と「勤労」について説いたものです。

この二つに

推譲」(分度と勤労によって余ったものを将来のため、あるいは世の中の為に譲ること)

を加えたものが金次郎の教えの骨子であり、

これを守る事で自分も世の中もともに豊かになるのだと説いたそうです。

これには「至誠」すなわち真心をもってことに当たる事が大切なのだそうです。


外には、二宮金次郎に関する説明書きもありました。




さて、これでざっと外回りを見て回りました。

肝心の資料館はこちらです↓




中に入ると、二宮尊徳に関する様々な資料が飾ってありました。




これは昔のお店の広告だったかな?

きれいだったので撮ってみました。


資料館の前には、木像がありました↓



この先は、有料の資料館になります。料金は200円♪♪ (安いなぁ~)


中は金次郎の幼年時代から、晩年までがおおよそ時系列に展示してあります。

金次郎の各年代ごとのイベントをまとめたオリジナルのアニメがあり、

それを一通り見るとだいたい二宮金次郎の一生と彼の業績が分かるようになっていました。とてもわかりやすかったです。


こちらは金次郎幼少期の様子↓



箱に砂を入れたものをノートがわりとして使っていたそうです。



光の具合もあるのでしょうが、字を書いてみても極めて読みにくかったです。

彼は働きながら、色々な本を読んでいたそうです。

しかし家が貧しかったので、夜本を読むために灯す明かりのための菜種油がもったいないと怒られたそうです。

そこで金次郎は余った土地に油菜を育て、本を読むための油を自ら作ったそうです。


彼は若いころ、儒教、仏教、神道などを学んでいたそうで、それらを自分なりに解釈して実践し、得たのが現代に残る尊徳の教えだそうです

儒教では「大学」を特に愛読したそうで、数学では「塵劫記」(じんこうき)という当時の実用的な数学書を読んでいたそうです。

金次郎の考えは、常に実践を重んじながらも、数学的な考え方と、宗教的な教えがそこに融合しています。

これらは、若い時に読んでいた膨大な読書が土台となっているようです。


彼の科学的な観察力の鋭さがうかがえるのが下のエピソードです↓



ナスの味が違う事から飢饉が来る事を予想するなんて、今の人で出来る人がいるでしょうか。


金次郎は、数々の町の復興を依頼されますが、下の様子は、町が飢饉で苦しんでいる時に、蔵を開けて民に施すように指示していてるところです。




金次郎自身は蔵をあける許可を得ていましたが、そこの役人はその指示を聞いていなかったために、上司に確認できるまで開けないといったのだそうです。

すると金次郎は、ならば確認できるまでともにここでともに断食しましょうと言ったそうです。根負けした役人はとうとう蔵を開けたそうです。

このエピソードは、NHKの「
その時歴史が動いた」でも紹介されました。


金次郎を描いた絵↓









金次郎の教え「分度」と「推譲」についての説明書きも有りました。





下の写真は、金次郎が川をせき止めるのに、まず家の屋根を沈めて土台にした時の様子だそうです。




館内には、金次郎の親戚の写真もありました。




さすが金次郎の親戚というべきか、皆さん賢そうで、いい顔をされています。


金次郎の肖像は、昔の一円札に使われていたそうです↓。


解説に書いてある「日本が生んだ最大の民主主義者」という表現が面白いなと思いました。

彼の教えは、実践に裏打ちされたものだったので、時代を超えた真理があり、それが各時代の人に何かを訴えかけるのだと思います。

館内には、質問したら解説してくれるボランティアのおじさんがいたのですが、不況になると、ここを訪れる人が増えると言っていました。


私もそのおじさんに色々質問したのですが、おじさんもよく分からない事があったので連れてこられたのが、館内にあるこの図書館↓



ここの棚に在る百科事典みたいなのが、すべて金次郎が残した著作だそうです。

凄まじい量です。自分が生涯をかけて獲得したものを、後の世になんとか残したいと思ったのでしょうか。


ここの資料館では、金次郎の生涯とその教えが手軽にわかる冊子を300円だったかで販売していました。

下のページは、その資料の金次郎の教えの骨子と、彼の年表です。


積小為大」と「一円融合」↓




勤労」「分度」「推譲」↓




金次郎の一生↓



金次郎に関する資料を心行くまで堪能し、色々と教えてくれたおじさんにお礼を言い、資料館を後にしました。

帰りは正面入り口から出て別の道から帰りました。


道路脇にレンゲの花が一面に咲いていました。










これを見ながら、尊徳の教えが頭の中によみがえりました。


勤労、分度、推譲、積小為大、一円融合、、、

これらはよく考えてみると自然の営みそのものではないのか、と。





館内の説明してくれたおじさんがいっていました。

尊徳の教えは当たり前だけど、その当たり前を実行するのが難しいのだ。

と。

人間は自然の営みから大きく外れてしまっているため、何をよりどころにしたらいいのか忘れてしまっているのだと思います。

しかし二宮尊徳は、原点は自然にあるのだということを、改めて言葉にし、それを実践したのだと思います。

自然を手本にしているからこそ時代を超えた普遍性がでてくるのだと思います。




尊徳の教えに接し、レンゲの花を見て、駅に戻る道すがらいろいろ考えました。

地球の生態系を樹にたとえるなら、人間はその木の枝についた葉っぱで、枝を通ってくる水や養分を得て初めて茂っていられるのだと。

だから豊かになるにしても、自然のサイクルと調和した歩み方をしないと、結局は自ら枝を損ない、葉っぱごと枝が落下してしまう事になるのではないかなどと。


尊徳の教えは、個人ばかりでなく、企業、自治体、国にも応用できる教えですが、

私は日常生活の中で、自分の出来る範囲で学んだ二宮尊徳の教えを実践していけたらなぁと思いました。








おしまい。




参考:

小田原市発行の二宮金次郎物語を読みたい方は、下をクリックしてください。
(f11キーで全画面表示にし、スライドショーにて一時停止し、手元のキーボードの矢印でめくっていくと読みやすいです)

ここをクリック


資料館までの行き方(地図)




小田原市 尊徳記念館
http://www.city.odawara.kanagawa.jp/public-i/e_f/sontoku/sontoku.html

小田急線路線図
http://www.odakyu.jp/guide/railmap/index.html

二宮金次郎物語〔小田原市教育委員会作成〕
http://picasaweb.google.co.jp/mshikon/MYoVqI

NHKその時歴史が動いた:二宮金次郎
http://www.nhk.or.jp/sonotoki/2005_09.html#02

ウィキペディア(二宮尊徳)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E5%AE%AE%E5%B0%8A%E5%BE%B3


彦兵衛のブログ(過去二宮金次郎を扱った記事)

〔近所の神社をぶらり訪ねて〕
http://mshiko.blogspot.com/2009/04/blog-post_20.html

〔長野の企業と二宮金次郎〕
http://mshiko.blogspot.com/2009/03/blog-post_30.html



0 件のコメント: